幸せ

耳元に聞こえる微かな音色はジャズだ、小説を書く時に筆体はアドリブになる思考と重なって協和音に置き換えられる。書くことに於いて精神は疾風になり重ね書きが始まるどうであったかああであったか文章は進んでいく、そうだあの時はこうだった、と独り言を言い書き進む、そこには過去にあった出来事が鮮明に頭に映る、そして文章は続いていくのだった。ある日の午後、呼ぶ方の方向に顔を向ける誰もいない、これは書くことに於いての錯覚であろう。楽しさは書くことよる連鎖反応である。そして文章は続くのだった。

             多大 和彦 トーマス

グローバル化されてしまった世界 自然との共鳴は可能か

2019年末にパンデミックと言う姿なき無言の威圧が限りなく世界を席巻するとを誰が疑っただろうか。だがウイルスは忍び寄っていた事は確かなる事実だ、その足音は心なしかざわつきを表していた。2004年鳥インフルエンザが人体に影響を及ぼすようになった、ウイルスの行き場が生命体を介して媒介と言う効率性を上げて来た。地球環境はウイルスと自然界に於いて未必の故意に当たるような必然性がある。少し以前にサーズ、マーズウイルスが鳥獣類を通して感染が始まっていた。以後、人へと移行し人の間を介した感染となっていく、その後、小康状態が継続して今日に至る。

人間の世界もそれと平行線上に間接的な行動行為が可能となるインタネット世界がより重く頭をもたげてきた。所謂リモートを旨とするネット世界だ。これは全てに於けるアクセスが可能となるであろう、いや可能だ。そこで最大の懸念材料が生じる、政府が個人のプライバシーを確実に掌握出来ることだ。ではあるが世界の人口の全てには不可能である。ただターゲットとなると話は別だ。より密度のある暗号化が必要となり政府に加担するような企業でなければ脅威とする事もないであろう。

この二つは思考内回路に収めることは必須で共存形態を構築する事は大切である。今後起こり得る諸条件は地球環境変化による災害及び自然災害に対して自己の精神的免疫を上げることと、変異するウイルスへの対処である。ワクチンの云々を問うがワクチン接種がなければ結果は甚大になったであろう、集団免疫を構築し個人の免疫向上にも寄与する。ではここで問題となるのは特異体質と突発性特異体質である、言及するがこれは神の領域となってしまうであろう。

        傑出の一遍    多大 和彦 トーマス

赤い褌

  隅田川の土手より見つめる太郎の姿あった。そこには赤い褌を締め肩に筋肉の塊がある赤銅色に染まった50歳がらみの男がいた。足のふくらはぎの筋肉は二つの丘陵となりくっきり割れ浮かび上がっている。土手にある艀(はしけ)迄歩み寄ると一気に体を平行に水面へ突き刺すように飛び込んだ。水には慣れている感じを強くしたのは行き成り抜き手泳ぎを始め難無く向こう側の川岸に泳ぎ切る、水から上がると太郎の体は筋肉の活性があり一層盛り上がった、白い歯を見せ対岸に向かって手を振るのだった。日傘をさした妙齢の美しい女性が笑顔で手を振り返していた。

太郎が生まれたのは戦直後の東京だった、そして当時は皆飢えたいた。街には浮浪者も多く、ただ進駐軍と言う占領米兵だけが我物顔で歩く姿が目に映った。母はパン助と言う米兵相手のサービス業をしていた。それほどその時の女性の生きる環境は最終線を遥かに超えたいた。東京の空だけはヤケに青く澄み切って夜空は星が降るようだった。太郎は二歳の頃の出来事を鮮明に覚えている、焼夷弾の絨毯爆撃で焼け野原が東京の各所に散在した、母親におぶさりネンネコで温かく覆われ親子姿で近道であったのであろうその焼け跡野原がだ。太郎がふと後ろを振り向くと戦闘帽(戦地からの帰還兵の多くは今のキャップのように被っていた)を目深に被り男らしき者が近づいて来た、突如母の買い物袋を引っ手繰るとその者はニヤニヤして走り去って行った。母は咄嗟にドロボーと叫んでいた。が、治安の悪い闇夜の焼け跡だ打つ手がない、無かった。太郎は二歳だったがその記憶は確か過ぎた。それは多くはない生活費だったのだ。

親子で住んでいたのはドヤ街の四畳半安宿泊所だ、日の射さない薄暗い所だった。三歳になった頃、母が朝帰って来て板状の物を渡してくれた、早速封を開けると濃い茶色の菓子のように見え一欠片を口に含むと、驚嘆するほどの味で標点が定まらないような旨さとともに笑顔が自然と込み上げてきた。後年それが母の味で食べるたびに慰めとなり瞼が熱くなるのだった。母の目は涙で溢れていて言葉が掠れる「太郎 御免ね母ちゃんは行かなければならないんだよ、お前の父ちゃんは米兵だよ、分かる」、太郎は聞き分けが良く手の掛からない子だった、おぼろげながら太郎は理解しているようだった「うん 分かった母ちゃん」一言だけ言った。無邪気な息子を見ていると母は嗚咽の声となってしまっていた。

親子が立っているのは光の家と言う孤児院の前だった、母の目からは涙だけが無言で流れ落ちている、太郎も察したのか泣いたことのない目からポツリと涙がこぼれた、「太郎 このお守りは母ちゃんだと思って寂しい時には話しなね」と太郎の首に掛けてくれた。太郎は日頃から決して無理を言わない子だった、後追いすることも出来たが母の胸中を察すると可哀そうであり、自尊心らしきものが許さなかった。「母ちゃん 大丈夫」とだけ口にするのがやっとだった。そしてその後会うことはなかった。

院内では一人でいることが多かった、やはり他とは違う顔立ちなのでいじめとはいかないまでも「お前 何処から来た」と時々言われた。でもお互いに過去を持っているのでそれ以上は進まなかった。太郎の顔は母に似たのか日本人ぽさもあったのが幸いした。太郎は勉強は好きな方ではなかった、いわゆるB型は興味のある事にははまり込むがそうでもない事にはとんと駄目であった。近くの川べりの土手を一人で歩くのが好きだった、みのも(水面)を見、大空に浮かぶ雲を見、頬に感じる季節の風に明日を映し描写していくのだった。ある日の光景が鮮明に焼き付く出来事が始まろうとしているのであろう、一隻の達磨船が川辺の土手に停泊し積み荷の石炭を土手の反対側の工場置き場に積み下ろす途中だった。達磨船と土手に足場の渡し板を掛け、その板沿いに天秤棒の両端に平たい籠を付け船倉から石炭を両側均等に石炭を入れ、細い渡し板を調子を合わせて行き来して船倉から工場置き場迄石炭を運ぶのだ。単調に見えるが熟練した技とリズムが是が非となる。そのなかの一人で赤い褌をした沖仲士(職業名)がいた、彼の足のふくらはぎは腓腹筋側頭と腓腹筋外側頭に明確に別れ二つに割れ丘陵となっている、肩幅も広く重動労に鍛えられた体があった。きりりと締めた褌が尻に食い込み肉体動労の躍動感と美観をも十分感じる。

時の流れは風のように音こそしないが過ぎていくざわつきは感じざるを得ない。来年は中学を卒業だ、高校卒業迄は院では可能だがその選択は彼にとっては意味をなさない。早く社会に出ることは経験と言う方向性を体を持って接受したかったのだ。

太郎は院の門の前にいた、ため息をつきながら脳裏では走馬灯が逆回転し始めた、最後に母ちゃんと別れた同じ場所だ「母ちゃん これからは標の無い道を歩かねばならないが負けないよ」と心に止めあの時の母のくれたお守りを握りしめた。そう多くはない持ち物を大きめのボストンバッグに収め、院長先生以下スタッフに挨拶をしながら門を出た。丁度その時だ、同級生だった女子生徒が数人駈け寄って来た、「太郎 頑張ってね、太郎は大人しいからもっと元気をださないとね」、「太郎 女生徒には人気があったんだからね」、「太郎 もし今度会ったら喫茶店に連れてってね」、「あっツ ずるい売り込んでる」、てんでんに言いたいことを言いながら見送ってくれた。

下町の旋盤工場で働くことになった、薄暗い工場内、機械油の匂いが鼻につく、同じ工作の繰り返しだ。何のためだ自問した、答えは虚しかった「太郎君 食うためだよ」自答が山彦のように耳に反響した。近くの駅に太郎の姿があった、どこか寂しさを感じる無表情だった、トラック助手募集が駅の掲示板に貼ってあった。真夏の炎天下での積み荷作業だ玉の汗が流れ落ちる筋肉労働だ。しかしその雰囲気は不協和音のようなジャズめいた一心不乱の境地に共鳴していった。仕事後の爽快さは太郎の好みにマッチした。明日は成人式だ、大型免許も取得したし、一応 納得のいく人生行路、「そうだ あの時のあの仕事士の上書きを我が身に複写しよう」、「我が肉体への筋肉を通じて語りかけながら明日を追いかけてみよう。

あの時の赤い褌の沖仲士だ。この仕事は船舶を管理する組合から停泊場所を受け取るので日雇いだ。積み荷は石炭、米俵、セメント袋等重量物だ、汗と筋肉の軋みと巧みなリズムだ。太郎の体は見事なまでに筋肉の鎧となっていった。相変わらず一人暮らしだ、家事も細目にこなし不自由はなかった。食事も菜食中心で外食もほぼしない、(あのゴリラはマッチョだが菜食だ)、独り言。確かに本をよく読んだ、漢字も時々は誤判断するがそれなりに乱読するうちに文章の繋がりから解読できていった。太郎は油の乗り切った40歳になっていた。

何時ものように足場の渡し板をリズムよく渡っていると、土手の上で見つめる目線を感じた、犬を連れ日傘をさした女子のようであった。昼食となり土手に上がりこれも何時ものように玄米弁当の蓋を開けると、何時ものように梅干しと葉物の漬物と干し魚、そして緑茶ではなくコーヒーと言う不協和音だった。すると何処かで太郎と呼ぶ声がした、それも太い声ではなく綺麗なソプラノだ。ふと横を見ると5メートルほど先で女子が犬を呼んでいるのだった。太郎は吹き出してしまった、するとそのお嬢さんが「御免なさい、太郎がそちらへ行こうとしたもので呼んだのです」、「いや別に問題ありませんよ」太郎は笑い返してこう言った「ボクも太郎なんです」。そして暫く笑い声が止まらなかった。時々その土手に姿を見せるようになった、彼女は看護師として勉強中であったのだ。特に人の筋肉についても勉強中だとも話してくれた。「私 18歳です」、「そう見えますよ」太郎は笑みを浮かべて言った。

あれから10年経っていた。泳ぎ返してくる太郎に向かって「今日は何を作ったくれるのー」、嬉しそうな声が太郎の耳に入った、「何でも言ってー」太郎もそう言われるのが好きだった。

              多大 和彦 トーマス

時めかざるを得ない人生の一ページ

少女の名は杏沙と言った。日本人である、そうバイクを担ぐようにして貨客船に乗船して来た。長い脚は甲板とデッキの軋轢を感じた。バイクの駐車場所は船底だ、そのラインに沿ってその場所に止めベルトで押さえた。再びデッキに戻り船舶が出ようとしている桟橋を見ると一羽のカゴメが急降下して頭を掠めた。思い出のある日のことが蘇った。

ざわつく浜辺を二人で歩いていた月光が信二を照らしていた、彫の深く鼻筋が通ったそれは見事なまでのバロック造形されたような顔立ちだ。杏沙は言った「信二 この先どうするの」、信二は無言だった。ヒョイと貝殻を拾い海面に添うように投げた、「なるようになる」と言い放った。杏沙のバイクに戻った、何時ものように長い脚が宙を舞いシートにおさまった、信二もタンデムシートに身をおいた。瞬時アクセルを絞るのでエキゾーストの爆音、タイヤの軋みを残して消え去った。

インカム越しに「信二 あの子に未練ある」信二は杏沙の腰に回した両手に力を入れ「うん あるけどオレの体もそれほど長くない」、冷たいハグった両手からは寂しさを感じた。

信二は宿でホストをやっていたそうだ、その前はキックボクサーであった、以後その古傷に身を置くことになってしまう。そのホスト時代、早い時間に歌舞伎町に着いたので久しぶりに歩き回ってみた、かなりの混雑だ「雑踏もいいもんだ」独り言を呟いていた。辺りは薄暗くなってきた、場に似合わない女の子がとぼとぼと歩いていた、信二と並行線上に並んだ、歩調を合わせるように歩き始めた。横目を流すと彼女は色白の正しく美少女だ、彼女も見つめた。するとたじろぐような彼女の姿勢が揺れた。言うまでもい美男美女同士だ一つの雰囲気が生まれない訳がない目線の振り向きだった。信二がさりげなく「何処へ行くの」、彼女はモソモソと、ではあるが悪びれることはなく「ホストクラブ」、話が数秒止まった深いため息が信二から漏れた、路上ナンパでは決して言わない言葉で「そこは君の行くところではないよ」何故か少し強い口調になっていた。

ローソクの明かりが灯る静かな雰囲気のカフェに二人はいた、新宿は信二の溜り場だ熟知したいる。彼女が口を開く「何をしているんですか、声を掛けてくれてありがとう」信二の目を見ながら言った、先程注文したコーヒーとレモンスカッシュをウエイトレスがテーブルに置いた、信二はコーヒーを常にブラックで飲む、苦みが芳醇に口内に広がっていく感じがたまらなかった。信二の白人並みの彫の深さがそれとよく似あった。薄明りの中に映る彼女の顔は寂しさも感じるが幻想性があり見つめているだけで十分だ、言葉はいらなかった。コーヒーを飲み干し「興味があるの」、優しい静かな声で「行ってみたかったの」、会話は止まった、聞き返さなかった。信二「オレ ホスト」、彼女は顔色も変えずに静かに言った「良かった、私、白血病と言う病気なんです、好奇心を出来るだけ満たしたいのです、生きている間に」。信二はそれとなく目で話を進めているようだ、「君の名はスズランとしよう、清楚だ」と言い切ると彼女は笑みを浮かべ無言だった。ホストハウスのフロアーは明かりを落とした空間に豪華なソファーが間隔を開け置かれていた。フロアーに漂う香りも心なしか心を和ました、信二の顔も眩しかった話をすることもあまり必要ではなかった。、スローなダンスサウンドが快くステージに流れた。信二はスローバラードなステップを踏む、スズランの体は高身長の信二の胸に吸い込まれていく。時間の流れに気を止めることもなかった、どことなくシャンペンコールが始まっていた。信二の優しい手がスズランの肩をつつんでいた、「お幾らですか」、信二のウインクが返事だった。表に出て「思い残すことないわ」スズランは信二にゆっくり静かに言ったのだった。そう思い続けて欲しかったのが信二の心だ。

数週間後、信二の携帯に連絡が入る「もうだめかもしれない」途絶える声であった、「うん 分かった、後から行くよ」と話を落とす、この先は話すことは不要であった。信二は虚無哲学の素養も持ち合わせていた。無表情な目から涙だけが溢れ出ていた。

クラブに向かう途中、携帯のコールが入った「信二さんですね ナースです、今朝5時に逝かれました、患者さんからそう連絡するように言われていましたので」、いなや信二の手から携帯が路面に落ちた。拾うことなく雑踏の中に立たずむのだった。その時、ヤンキー風の若者が信二の肩に肩をぶつけてきた、「何やってんだ 退け」相手は三人だ、信二は無意識のうちに身構えた、間に初を入れずパンチが飛んできた、身をかわすのも自然に動いた何時ものように反射的に信二の膝が一人の脇腹に入った、崩れた。後方の一人には回しパンチを入れた、崩れた。斜め前の一人には内回し踵落としが鎖骨に音をたてた、ほんの数分の出来事だった。「何故だ 俺に向かってくる何て」呟きながら足早にその場を去った。

そして数日後、同室している妹に「兄ちゃん 行くところがあるんだ、何か欲しいものあるか、「うん 兄ちゃんのバイクが欲しい」、「やるよ 可愛がってな」言い残して後にした。信二は杏沙にコールした「約束だ オレは行くよ」、「えっツ 何処へ」その後、杏沙の携帯は繋がらなかった、杏沙の耳にはあの時の潮騒が聞こえてくるようだった。

ビャクダンの香りとともにヤシの帆影を走る杏沙の姿があった。

 

                 多大 和彦 トーマス

 

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海辺の風は何時ものように心地よく頬をなぜていく、過ぎ去りし日々が波のように心をざわつかす、あの時のように携帯のコールが鳴って欲しい、あの時のように弾んだ声を聞かせて欲しい、そしてあの時のように話したい、話したいのだが。白い砂浜を素足で歩いていた、この情景の中に埋没するかのように涙が溢れて来る、どのくらい歩いたのだろう僅かな距離だがそう感じる、彼女を待つかのように白いオープンスポーツカーが彼女を待ちわびていた。パンプスに履き替えペタルを踏み込んだエキゾーストの音が後方に流れていった。

彼女と友達の彼女はドライブ中のすれ違いだった、平原を歩く彼女との目が合った時だ、確かに吸い込まれるような強い印象が残った。直ぐシフトダウンしトーアンドシールをしガスペダル少し踏み逆ハン気味にUターンした。彼女はもともとモータリゼーションを楽しんでいる人だ、バイクも好きでオフとロードの二台を所持している。二回のUターンで彼女の側にタイヤを軋ませて止まったのだ、「散歩」と声を掛ける「うん 少し向こうのカフェに行くとこ」あどけない声が戻ってきた。「よし 乗って喉が渇いたから一緒に行こう」なぜか全く躊躇せず「車大好きよ」軽やかな声とともに助手席側吸い込まれるようだった。

取り留めのないオシャレの話から始まりトラベルの方に繋がっり、次回はツーリングの話で纏まった。お互いにバックグラウンドの話は全くしなかった、意味をなさないようだそのような話は。

二人のタンデムしたバイクが姿を見せたのは一カ月ほどしたからだ。彼女のライデングスタイルは膝までの乗馬ブーツ、黒の乗馬パンツ、革ジャン、首にはスカーフさすが姉御。タンデムする彼女も赤いブーツ、ジーンズ、パーカーに黒のジャンパー、黒のヘルメット、双方お見事。アクセルを搾りロードへと入った、いきなり風を切ってスピードを出した、キャーと言いながらしがみつく彼女、タンデムを気に入ったようだ。「楽しいい」と聞くと「今が最高この気持ちが続いて欲しいな」インカム越しにうねる、「そう私もなんだこのまま続いて欲しいよ」ぽつりと言った。

山間から下りに入るがスピードを落とさない、「しっかり抱き着いていてね」先方の岩がみるみる近づく、突如 花火のように咲、散った。

気が付くとベットにいた、ほとんど動けない体になっていた。が、あの時の彼女の声が耳に再生された「今が最高この気持ちが続いて欲しいな」とだ。側に看護師が立っていた「彼女は」と聞くと「風となりました」と言った、嗚咽の涙がとめどとなく溢れた「何故置いていくの」。

紛錯してしまったのか世界は

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ご無沙汰しています。

或る午後の強い日差しを浴びながら開くフェンスドア、何時ものように多くの目が私に向けられていた。どのくらい歩いたのであろう、どのくらい泳いだのだろう岸は見えてこない、暑苦しい感情と言う既成の概念に阻まれたようだった。自由は求めるべきものではなく自然に訪れるものだ。が、阻害されてしまったドアは二度と開かない。人生の或る角から覆いかぶさってきたのだ、人権侵害、それは花火のように燃え盛る花か毒花かだ。そして無音で忍び寄る無感情な魔の手だ。連鎖反応し染まっていく開花していく複雑な動作をいとも簡単にしてしまう手品のようだ。彼らは取りつかれたようにまるで蜜でも吸うかのようだ、それ以外の楽しみはなくなってしまったのだ。他にもう一つあるそれは金を見て舌なめずりする姿だ。

デープステェートと言う影の政府が大きく背後に潜んでいる深い状況下だ。ほとんどの市民も加担するように洗脳されてしまった。無知と言う媒体を把握しているから、市民は抜け出せない哀れとしか言いようがない人々だ若干の報酬に右往左往してしまう、それがハンバーガーの報償らしいと聞いたことがある。組織ストーキングが犯罪であるとの認識もなく赤信号皆で渡れば怖くない程度かな。

現在 世界全体が自由に疑問符がついてしまった、新型ウイルスとの事で。従来と異なり変異して挑んでくる、豪雨により地表の変化で土石流となる、因果なもので自由は人権侵害からは得られない、大自然の摂理が及ぼす影響下だ。自由、正しさを重く受け止め正道を見極めて欲しいい。地に枯れても因果応報に背面する生き方は考えて、例え政府の要請でも。

霧氷に煙るキッチンドリンカー

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ご無沙汰しています。

 

北海の積丹半島近くに彼女の生家ある。自然に恵まれはしても厳しさには変わらない冬の止む事のない雪また雪である、自然は容赦なく性格をも構築していくもんだ。性格の暗さは其のころ培われたのであろう。お爺さんは蟹とり漁師、お父さんは大工と言う家柄から非凡差は感じることは出来ない。五歳のころから真っ青な海を見るのが無性に好きだった心が落ち着くのであろう、ただ茫然と見ているだけで満足を得た。子供たちに虐められることはあっても遊ぶことなく夢を見るかの様だ。お父さんは5歳年下でお母さんの自慢でイケメンでもあった。それは子供も心に優しく映った。

高校を卒業し就職の為札幌に出る。性格が明るい方でないので一般的な仕事は無理の様だ、幾つか変えるうちに清掃員と言う比較的人と交わらない個人を旨とする仕事についた。雪子は動物特に犬が好きだ、これに溺愛する人は無償の愛で犬に溺れていく、無所得に愛してくれる、それが犬猫だ。札幌の大通り公園を犬のサムと散歩中に声お掛けられたのが8歳年上の結婚していた彼だ。24歳の時だった。彼の家に入り一年後に年子で二人の子供育てることとなる。仕事、彼の両親との軋轢、育児、精神的な疲労が背後から風のように舞い込んできた。そうなると夢が幾つか音を立てずに脳裏を過るものなのだ。そのような時の夢は荒唐無稽なものが多い、外国語のオーソリティーなるとか、外人に文化を伝える個人事業とか、一人キッチンに立った時に飲む酒は遠慮がない、だから量は増えるものだ。またその時こそ夢の始まりは果てしないものとなるものだ。量と親族との軋轢は増すこそあれ消えることはなくなった。24年が過ぎ去っていた目の前には50歳の大台が待ち構えている時だった。吹雪く日だった、酒も多めに入ったいきなりおとなしい夫に離婚を言い放った。夫は黙っていた、そして一言放った「分かった、何時でも会いたい時には合うから」と寂しそうに言った。

その時定山渓温泉シエハウスでルーム係清掃の住み込みの仕事があった。考えることなくその仕事を選択し愛犬のアルと移り住んだ。酒は好きなだけ飲めるし自由だし前夫に声を掛ければ一緒に過ごせるし、だが良くしたもので将来の夢に再びとりつかれてしまったのだ。と同時に政府の影の要人からある男とのメール交換の要請が来たのだ。報酬も貰えるし願ってもないことだ。堰を切って将来が崩れていくの知らないままに虚飾な人生に酒を道ずれに入っていたのだった。