霧氷に煙るキッチンドリンカー

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ご無沙汰しています。

 

北海の積丹半島近くに彼女の生家ある。自然に恵まれはしても厳しさには変わらない冬の止む事のない雪また雪である、自然は容赦なく性格をも構築していくもんだ。性格の暗さは其のころ培われたのであろう。お爺さんは蟹とり漁師、お父さんは大工と言う家柄から非凡差は感じることは出来ない。五歳のころから真っ青な海を見るのが無性に好きだった心が落ち着くのであろう、ただ茫然と見ているだけで満足を得た。子供たちに虐められることはあっても遊ぶことなく夢を見るかの様だ。お父さんは5歳年下でお母さんの自慢でイケメンでもあった。それは子供も心に優しく映った。

高校を卒業し就職の為札幌に出る。性格が明るい方でないので一般的な仕事は無理の様だ、幾つか変えるうちに清掃員と言う比較的人と交わらない個人を旨とする仕事についた。雪子は動物特に犬が好きだ、これに溺愛する人は無償の愛で犬に溺れていく、無所得に愛してくれる、それが犬猫だ。札幌の大通り公園を犬のサムと散歩中に声お掛けられたのが8歳年上の結婚していた彼だ。24歳の時だった。彼の家に入り一年後に年子で二人の子供育てることとなる。仕事、彼の両親との軋轢、育児、精神的な疲労が背後から風のように舞い込んできた。そうなると夢が幾つか音を立てずに脳裏を過るものなのだ。そのような時の夢は荒唐無稽なものが多い、外国語のオーソリティーなるとか、外人に文化を伝える個人事業とか、一人キッチンに立った時に飲む酒は遠慮がない、だから量は増えるものだ。またその時こそ夢の始まりは果てしないものとなるものだ。量と親族との軋轢は増すこそあれ消えることはなくなった。24年が過ぎ去っていた目の前には50歳の大台が待ち構えている時だった。吹雪く日だった、酒も多めに入ったいきなりおとなしい夫に離婚を言い放った。夫は黙っていた、そして一言放った「分かった、何時でも会いたい時には合うから」と寂しそうに言った。

その時定山渓温泉シエハウスでルーム係清掃の住み込みの仕事があった。考えることなくその仕事を選択し愛犬のアルと移り住んだ。酒は好きなだけ飲めるし自由だし前夫に声を掛ければ一緒に過ごせるし、だが良くしたもので将来の夢に再びとりつかれてしまったのだ。と同時に政府の影の要人からある男とのメール交換の要請が来たのだ。報酬も貰えるし願ってもないことだ。堰を切って将来が崩れていくの知らないままに虚飾な人生に酒を道ずれに入っていたのだった。